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(きっと、私が何かをするのでしょうね)
心の中で、そんなことを思う。現状『土の豊穣の巫女』は私だけだと聞いている。だから、私が何とかしなくちゃならない。そう思っても、なかなか難しいのだけれど。
「ねぇ、サイラス」
そう思いつつ、私はサイラスに声をかけた。すると、彼はきょとんとした表情を浮かべる。
なので、私は意を決して尋ねてみることにした。
「土の魔力を、何とかする方法があるのでしょう?」
「……っ」
彼は何とも言わなかった。けど、それが一種の答えだったのだろう。
そっと逸らされた視線。……察するほかなかった。
(サイラスの態度からするに、きっと私の身体に負担がかかることなのだわ)
サイラスは私のことを大切に思ってくれている。なので、私の身体に負担がかかるようなことは望んでいないのだと思う。
でも、このままだとじり貧になるのは目に見えているの。……私が何とか出来るのならば、何とかしたい。
心の底から、そう思っているのに。
「……お言葉ですが、その儀式を行うためには魔力のコントロールが大切です」
「そう、なの」
「奥様では、まだ少し無理かもしれません。それに、儀式の許可は王家が出されます。王家の意向を無視して、儀式を行うことはできません」
サイラスの説明はもっともなことだった。
王家が許可を出してくれないと、膨大な魔力に関することなど出来ないだろう。……少し考えれば、わかることだった。
(それに、まだ私は魔力のコントロールがあまりうまくないものね)
魔力のコントロールが上手く出来ないと、何かデメリットがあるのだろうな。
そう思いつつ、私は土を握りしめる。……やっぱり、魔力が少ない。
(どうにかしたい。……私に、出来ることがしたいの)
そんな風に考えていれば、不意に生ぬるい風が頬を撫でた。その不気味さに、私がぶるりと身体を震わせてしまったときのこと。
一人の従者が、こちらに駆けてきた。
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