第2話 十五歳年上の旦那様は可愛らしい

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「……あの、旦那様、お忙しいのであれば、無理はなさらないでください」 「……いや、その」  少しだけ小首をかしげてそう声をかければ、旦那様が狼狽えてしまわれる。  ……結婚してしばらく経ったけれど、このお方は私を直視されないことがある。その頬が真っ赤に染まっているのを見ると、嫌われていないというのはわかるのだけれど。 「私は旦那様と一緒に暮らせるだけで、幸せですから。……なので、ご無理はされないでくださいませ」  自分の気持ちを素直にそう伝えれば、クレアとマリンが私の後ろでひそひそと会話を始めていた。 「旦那様ったら、奥様のお気持ちを無視されるつもりなんですねぇ」 「なんて最低なのかしらー」 「本当に、ヘタレが治ったかと思えば今度は最低な人なんて……」 「いつか奥様に愛想を尽かされても知りませんわー」  ……わざとらしい言葉だった。ついでに言うと、しっかりと聞こえるように割と大きめの声で会話をする二人。  なんというか、旦那様が可哀想になってしまう。 「……おい、クレア、マリン」 「わぁ、私たちに矛先が向きましたよ!」 「怖いですー」  クレアとマリンはそう言ったかと思うと、サイラスの後ろにわざとらしく隠れた。  ……完全に、旦那様は二人に遊ばれている。まぁ、主で遊べるということは、それほどまでにいい職場環境ということなのだろうけれど。 「……で、どうなさるんですか、旦那様?」  クレアとマリンを後ろに従えながら、サイラスがそう言う。  そうすれば、旦那様は頭をガシガシと掻かれる。 「あぁ、もうっ! わかった、わかった! シェリルのダンスのレッスンに付き合うから……!」 「……ですが」  何となく旦那様が不憫に見えてしまったので、私はそう声をかけた。すると、マリンが私の側に早足で寄ってくる。
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