閑話5 唯一、出来ることを(ギルバート視点)

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(支え合うことが出来れば、それでいいんだろう)  どちらかが弱っているときに、どちらかが支えれば。そして、その逆も。  もしかしたら、それが理想の夫婦の形なのかもしれない。  シェリルの手が、俺の手を握った。その小さな手が、少しだけ震えている。 「……だから、その、ですね」 「……あぁ」 「私のことを、どうか、忘れないでほしいのです」  声が、震えていた。 「もしも、私がいなくなっても。……どうか、お願いします」  ……多分、シェリルはすべてを知っているのだ。この国の現状も、自分の身体のことも。  俺が思うよりもずっと、シェリルはたくましいということなのだろう。 「私に出来ることは、やりたいと思っております。……たとえ、この命に代えても」  そんなこと言わないでくれ。  のどまで出かかった言葉を、俺は飲み込む。  シェリルだって、好きでいなくなるわけじゃない。好きで死んでしまうわけじゃない。  ただ、自分に与えられた役割を全うしようとしているだけだ。……俺も、いい加減覚悟を決めなくちゃならない。 (シェリルを失うのが怖い。だから、何もかもを犠牲にしようとした)  たとえ、それが一時しのぎにしかならないとわかっていても。シェリルを失うよりは、ずっとマシだと思っていた。  彼女が辛い目に遭うくらいならば。俺が、苦労すればいい。そう思っていたのに……。 (その気持ちも、シェリルにはお見通しだったわけか)  それを、悟った。
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