3265人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
「奥様~。こちら、先代の奥様からの贈り物です」
「……お義母様ったら、そこまで気を遣わなくてもいいのに」
旦那様とアネット様の事情を知ってから、数日が経った。
寝台で眠っていた私の元に、クレアがやってくる。彼女は大きな箱を持って、ニコニコと笑っていた。
「いえいえ、娘が出来てとても嬉しそうでございますから。……あと、純粋に心配だそうで」
クレアが眉を下げてそういう。
旦那様のお母様……私から見て、お義母様は私のことを歓迎してくださっている。なんでも、旦那様がようやく結婚したと知り、絶対に逃がさないようにしたい、ということらしかった。それは、お義母様が自ら語ってくださった。
そのうえで、『豊穣の巫女』であり、現在体調を崩している私のことも気遣ってくださっていた。
領地で見つけた美味しいものを、たくさん送ってくださるのだ。
「中身は普段通り食材でしたので、今晩お出ししますね」
ニコニコと笑ったクレアが、そう言う。なので、私は頷いた。
「それにしても、なんていうか空模様もおかしいわよね」
ふと、私が窓の外を見つめてそう呟く。そうすれば、クレアは「そうですねぇ」と同意してくれた。
窓の外では雷鳴が聞こえる。雨が降りそうで、降らない天気。……もしかしたら、王国の水のほうも不安定なのかもしれない。
(『水の豊穣の巫女』の方も、大変なのかもしれないわね……)
無意識のうちに、そう思ってしまった。
なんだか自然と手に力が入って、毛布を握りしめる。そっと視線を下げて思い出すのは、アネット様のことだった。
最初のコメントを投稿しよう!