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「ご婚約、おめでとうございます」
白々しく祝福の言葉を掛けてくる招待客へ、央司は微妙な笑みを浮かべて軽く頭を下げた。
実際はまったく嬉しくないどころか、時間が戻ってほしいとしか考えていない。
横に座る美那は、央司に視線を向けることはないけど満面の笑みだ。
姉が得るはずのものを奪い取った満足感が伝わってくる。
でも、そのために利用した央司のことは無視してくる。所詮、目的のための駒だったからだろう。
央司も美那の顔は見たくなかった。
もし、彼女が妊娠さえしなかったら……結婚前の隠しごとの一つで終わったのに……
決して、届かなくなった女性を思い浮かべる。
いつも優しい表情で央司を見てくれたのに、最後は軽蔑を滲ませた視線を向けてきた女性を……
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