第三章 去った蝶

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 「婚約披露までには(なお)るんでしょうね。  そんなみっともない姿であたしの隣りに座るなんて認めないわ」  半月先だから、さすがに青あざは消えると思った央司は頷いた。  「大丈夫だと思う」  二人の会話はこれで終わった。  こんなに会話の弾まない女性が自分の妻になると思うと、苦痛で消えたくなる。  佳織とデートしたり部屋に招いた時は、アニメーションのことで会話が途切れることはなかった。  母親も笑顔で佳織との会話を楽しんでいた。  でも、(あきら)めるしかなかった。  佳織は完全に央司(おうじ)を拒絶して英彦を選んだ。  このまま美那と結婚するしかない。  結婚前なのに、人生が終わったような気持ちになった。
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