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美那と密会したのは自分だ。それでも、誰かが気づいていたら、という思いが湧くのは止められない。
注意されれば、さすがに美那と会うことはやめて佳織だけと交際しただろう。
そうなっていたら、美那との結婚を強制されなかったし、佳織に軽蔑の視線で見られることもない。さらには英彦に殴られることもなかった。
(どうして、こんな不幸な目に遭うんだ……)
英彦に厳しく言われても、思いを変えることはできない。
ぼんやりと外を見る央司の耳に、ドアの向こうからの声が届いた。
「央司さま、車が到着いたしました」
「分かった。すぐ行くから待たせて」
罰でしかない時間がもうじき始まる。
でも、どうしようもできない央司は、少し俯きながら部屋を出た。
央司を利用した女との婚約を報告する場所へと。
時間が早く過ぎ去ることだけを願いながら、央司は水野家が用意した車に乗り込んだ。
おわり
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