第一章 禁断の誘(いざな)い

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 「あの……結婚前に男性と親密になるのは……子供が出来たら大変なので」  彼女は、初めての女性社長になるということだから、相当慎重になっているらしいと央司(おうじ)は思った。  (簡単に妊娠なんてしないのに)  央司は当然だけど、数人と交際したことがある。  社長の息子、というのは、それだけで魅力的らしい。でも、央司がアニメ好きと分かると、微妙な表情をされて自然消滅した。  意味が分からなかった。  人の趣味は自由なはずなのに、イメージと違う、と言われるのはすごく不満だ。  でも、佳織は一緒に映画を()てくれた。  今までの女性と違うと分かると嬉しくて、もっと近づきたいと思ったから、断られると少し不満だけど、無理に関係を(せま)ることはできない。  さすがに、強引にホテルの部屋に連れていくのが問題くらいは分かる。  「……それじゃ、ディナーだけでも」  「それでしたら」  恥ずかしそうに笑みを向ける佳織は可愛くて、(かす)かに感じた不満を央司は忘れた。
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