歓びの歌

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「って言うのが昨日あってさ〜あ!理佳ー!やっと起きたな、このねぼすけめ!」 ごつん、と頭にいきなり衝撃が走った。 無理やりそこに意識でも落とされたみたいで、くらっと目眩がする。 あたりを見回すと、ミサキと瀧本君が心配そうにこっちを見ていた。 「っつーか、…ずっと寝てたよなコイツ。先生がこう、隣で叫んでも起きなかっただろ」 「かわいそうだったねぇ〜あれ。耳元でずっと平安京からの年号並べても起きなくてさ…途中からの平家物語のくだり…見てられないわ〜あれは…」 「…今、何年…?」 尋ねると、二人は顔を見合わせて、怪訝な表情でわたしを上から下までしげしげと眺め、黙り込んでしまった。 「1995年。…って言ったら信じる?」 聞こえた言葉に咄嗟に振り向く。後ろに学ランを着た黒髪の男の子が立っていた。後ろに手を組みながら、笑顔で立っている。 「…だれ…?」 「いやそれは流石に無理っしょー?1995年って何年前だっけ?あーっと、え?…あれ、っていうか今年何年だっけ……はてな???」 「あーもう、寝ぼけた女どもはほっといてさっさと職員室行って来い。…職員室、覚えてんのか?採寸すんのいつ?」 「あ!わたしも先生に呼ばれてたの忘れてた!」 二人はガタガタと立ち上がり、リカも早くおいで!と手招きしてくれた。 放課後の教室にぽつんと二人。 知らない男の子と取り残されてしまう。 「忘れたの?」 「……あの……ごめんなさい」 「ふふ、冗談だよ。転校生なんだ。だから今日君と会うのは初めて!よろしくね、三代さん」 夕日が、窓から差し込んで来る。…赤い赤い空の、際の部分から夜の気配が見えていた。締め忘れた窓から少し冷たい風が吹き込むと、彼はわたしの手前を通って窓枠に手を置いて、背を向けた。 「……誰だと思う?」 振り向いた彼は、綺麗なすみれ色の瞳で、わたしを見た。
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