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パチパチと木のはぜる音、ゆらめく暖炉の火が目に入った。
薄い闇と、ぼうっとしたろうそくの明かり。
まぶたが重く、思うように目が開けられない。
体の節々が痛み、力が入らない。
それでも、イリスは自分が厚い毛布でくるまれて、誰かに抱かれているのに気が付いた。
「あ・・っ」
自分の上から、低めの声が響いた。
「気が付きましたか?薬湯を飲めますか?」
シオンに抱かれている。
「うん・・」
少し体を起こされて、温かい陶器のカップが唇につけられた。
コクン
イリスは、トロリとした液体を飲み込んだ。
それは、甘いけれど、苦味も感じる。
強い薬草の臭い。
「すぐに眠くなりますから、楽になりますよ」
耳元で響くその声は静かで、穏やかだ。
イリスは目を閉じた。
神殿巫女ってなんだっけ・・・思考の断片がかすめ流れた。
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