突撃事件

5/5
前へ
/45ページ
次へ
パチパチと木のはぜる音、ゆらめく暖炉の火が目に入った。 薄い闇と、ぼうっとしたろうそくの明かり。 まぶたが重く、思うように目が開けられない。 体の節々が痛み、力が入らない。 それでも、イリスは自分が厚い毛布でくるまれて、誰かに抱かれているのに気が付いた。 「あ・・っ」 自分の上から、低めの声が響いた。 「気が付きましたか?薬湯を飲めますか?」 シオンに抱かれている。 「うん・・」 少し体を起こされて、温かい陶器のカップが唇につけられた。 コクン イリスは、トロリとした液体を飲み込んだ。 それは、甘いけれど、苦味も感じる。 強い薬草の臭い。 「すぐに眠くなりますから、楽になりますよ」 耳元で響くその声は静かで、穏やかだ。 イリスは目を閉じた。 神殿巫女ってなんだっけ・・・思考の断片がかすめ流れた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加