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シオンは店を出ると、大きくため息をついた。
「何か・・すごく疲れますね」
イリスはニヤッと笑った。
「父親と娘ごっこプレイ、楽しくない?」
「魔族は、いろいろな事をするのですね・・・・」
シオンは、あきれたというか、よくわからないというようにイリスを見た。
「パパ、手をつないでよ。デートなんだからさ」
イリスは手を差し出し、強引にシオンの指を握った。
その手は大きく、骨ばってやや硬いが、木材のようなぬくもりがある。
緑のフェアリーというより、樹木の精霊のほうが近いかな・・・・
シオンは帽子を深めにかぶり、眼鏡をくいっとあげて
「さぁ、ケーキを買ったら、お家に行きましょう」
と、きっぱりと言ったが、何かを思いついたように
「ああ、そうだ」
シオンは道端の生垣にある枯れたつるを取り、輪にしてイリスの首にかけた
それから片膝をついて、そのつるに指をからませた。
その指の触れた場所のつるからは、緑の葉と白い小花が次々を出てくる。
「年越しの儀式では、子どもたちはこうした花輪を首にかけるのです」
シオンは金と緑の瞳を細くして、満足げにうなずいた。
「さぁ、行きましょう。ケーキの店ですが、どこがいいかな」
そう言うと、シオンはイリスの小さな手を握り、歩き始めた。
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