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「絹の素材の繭ですが、交雑種で別のものだそうです。
一度見て、交渉されてはいかがかというご提案ですね。」
イリスが叫ぶように聞いた。
「シオン・・様から!?」
アクアが微笑んで
「ええ、直々にお手紙なんて・・めったにないことなのですよ」
イリスは目を閉じて、唇をかみしめた。
会いたい、あの落ち着いた声が聞きたい、手をつなぎたい、抱きしめられたい・・・
あの深い森の匂い・・・
こんな気持ちになったのは、初めてだ・・・・
サキュバスにとって、ありえない感情。
「お礼の手紙を書かなくては、いけませんね」
アクアが言うと、イリスはすくっと、立ち上がった。
「直接、お礼をしにいく。はちみつ酒を持っていく!!」
言い終わると、イリスは頭を抱えて座り込んだ。
拒絶されてもいい。
自分の気持ちに、落とし前をつけるためにも。
前に進むためにも。
いや、前に進むのではない、元のサキュバスのイリスに戻るだけなのだが。
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