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イリスはシスルの体にまたがり、胸ぐらをつかんで叫んだ。
「最後に、チューぐらいさせろってば!
フラれたなんて、出禁なんて・・・・!
アタシにも、サキュバスのプライドってもんがあるんだから。
それで、あきらめる!
あんたの前には、二度と姿を現さないようにする!」
イリスの涙は、ぐちゃぐちゃの感情と共に、シスルの胸に落ちていく。
「ふぅ、くっ」
イリスの幼子のようにしゃくりあげる様子に、ようやくシスルは口を開いた。
「私が・・・遠い昔でしたが、神官になる前に妻と娘がいました。
妻は短命のフェアリーで、子どもを産むと亡くなり、娘も年越しの儀式の直前で逝きました」
シスルは金と緑の混じる瞳で、なつかしむようにイリスを見た。
「思い出したのです。あなたを見て、幼い娘の笑顔を・・・
私は、愛する者を失う苦しみを、二度と味わいたくない、そう思って神官に就任したのです。」
シスルの指が、イリスの頬にあてられた。
「娘が生きていたら、成年の儀式で、きっとあなたのように、かわいらしくなっていたでしょうね」
イリスが叫んだ。
「ちげーよっ、アタシはアンタに癒されたいって言ってんの!
あんたの娘とかの話じゃなくて・・・・」
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