潜入

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数日後。 「じゃあ、俺が武田の奴の気を引くから貫二郎、頼む」 「あ、ああ、しかしどうやって?」 「・・・貫二郎、これから起こる事に驚かず、ただお前は勤めを果たせ」 「小田・・・?」 「いいな、俺が『今だ』と言ったら入ってこい。武田はお前に気づかない筈だ」 「あ、ああ」 小田は下野から離れて進むと武田の部屋の前で一度、歩を止める。 「武田観柳斎組長、小田鍬之助、失礼しまっべよ」 「うむ」 小田は襖を開けて観柳斎の部屋に入った。 そう言えばアイツ、訛りで偽装していたなと思い出す下野。 下野は襖一枚隔てた外で小田の合図を聞き逃すまいと聞き耳を立てる。 しばらくすると・・・ んちゅ、んちゅ、んっ、んっ、と卑猥そのものな音とも声とも聞き取れるものが下野の耳に入る。 下野の心は一気に揺れる。 そうか、観柳斎も小田の手に堕ちていたのか・・・俺は何を期待していたんだ。 小田は俺の事だけを見てくれているなんて都合のいい幻想だった。 確かに小田の目的は新選組の内情を探る事、俺をものにする事は手段であって目的ではない。 そんなの分かっていた事じゃないか・・・落ち込むな俺、俺はあの快楽さえあれば・・・ 「今だ」 はっ!小田の合図で我に返る。 今は色々と考える時では無い。 下野はそっと襖を開け観柳斎の部屋に入る。 今、部屋の中では小田のモノが観柳斎に突き刺さっているのだろう。 そんな光景は見たくない。 しかし、見ない訳にもいかない。 ちらりと2人に目をくべる下野。 「っ⁉」 思わず声が出そうだった。 その光景は下野が覚悟していた光景とは、真逆のもの。 そう、貫いていたのは武田の方だった。 「くっ、くっ、くっ・・・」 「えへへへへへ」 入り口奥の壁に両手を着けた小田に武田が差し込んでいた。 2人とも入口に背を向けている事で下野に気づかない。 「か、観柳斎様あ、もっと、もっと、だべよ」 「いいだろう!ほれっ、ほれっ!」 分かる。 小田は本気で感じてなんかいない。 俺の口唇が、舌が小田のモノに絡んでいた時とは全然雰囲気が違う。 俺が一番小田と・・・はっ⁉ だからそれどころではないだろう俺! 下野は漆塗りの木箱の引き出しを開け、複数束ねてあった密書のうちのいくつかを抜き取る。 全部持っていくと気づかれるのが早くなるので数十あるうちの3、4つほどにとどめておいた。 そしてまた2人に気づかれぬうちに部屋を出た。
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