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死番
「どういうつもりだ?」
「おら、明日死番なんだよ」
「ああ」
このやり取りだけで全てが分かった下野。
死番とは簡単に言えば、夜間の市中見回りで先頭に立つ者の事を言う。
新選組をよく思っていない者は多く、襲われた時、当然先頭にいる者が一番危険であり、過去に死亡者もいた事から、死番という呼び名がついた。
死番は当番制で順番に皆に回って来る。
小田は明日死番らしい。
死ぬ前に一度くらいは番う事(セックス)をしてみたかったのだ。
かと言って下級隊士には女を買う甲斐性が無いし、京女は冷たく気取っていて田舎のイモ侍など相手にしない。
それでも日々、膨れ上がる欲棒を慰めるべく隊士同士でヌきあう事は珍しい事では無かったが下野にはその趣味が無かった。
「なぜ俺だ?俺はその趣味は無い、他を当たれ」
「いんや、おらはオメが好みなんだ」
どこの訛りだ?という疑問となぜ俺なんだ?という疑問がごちゃまぜになる。
下野は堺の南方出身で商人の息子だったが、父親の商売下手に愛想をつかして壬生の屯所まで入退希望としてやってきた。
貧しかったので、身なりはみすぼらしいが顔立ちはそこそこに整っている。
「とにかく、俺はさせてやるつもりはない」
「頼むん、交代でおらのも使っていいから」
「分からん奴だな、その趣味が無いと言っておろう。俺の損が増えるだけだ」
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