焦燥

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焦燥

 漠然とした不安が、ある。  明確に言葉にはできない不安が、ある。  その不安を無くすためにどうするべきなのか、それはきっと誰に聞いても分からない事だ。  なぜなら自分自身でも原因がよく分かっていないからだ。  その日を食っていく分の収入はある。  高くは無くともみすぼらしくない程度の服もある。  自分が満足するくらいの質と量の食事はできている。  人を見下ろすくらいの場所には住めそうにないが、雨風を凌ぎ、納得するくらいの住処もある。  友人も多くは無いが、それでも多少は心の解けた相手がいる。  一人で夢中になれるくらいで、そこまで金のかからない趣味もある。  最上の生活とは言えないでも、そこそこに満足できる生活を送っている。  だが胸の内には、言いようのない不安が真っ白なシーツに落ちた黒いシミのようにはっきりとある。  嫌に黒く、そこにぽっかりと穴が開いたような黒いシミ。  一体いつ、どこで、何が落ちて作ったのか分からないシミを見ていると、不快さと恐ろしさと不安が込み上げてくる。  一体何が不安なのか、どうすればこれがなくなるのか。  分からない、分からない、分からない。  夏の夕方、少し薄暗くなり始めた頃、電気を点けず風呂に入った時のような寂寥感を感じながら日々を生きている。
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