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「私、気づかないうちに人を傷付けていたのかな」  ポツリと呟くと、 「他人を傷付けない人間なんていませんよ。あなたは彼女を傷付けていたかもしれないけど、あなたも今、彼女達に傷付けられている。お互い様ですよ」 「お互い様……そうかしら」 「向こうがもう関わらないでくれと言うのなら、それでいいじゃないですか。いつかまた、分かり合える日がくるかもしれません。その時に笑って許せるようになればいい」 (そうね……私の顔を見るのも嫌なのかもしれない。そこまで怒らせた原因を知ることが出来ないのは辛いけど、いつかまた話が出来たらその時……聞かせてもらおう) 「ありがとう。ちょっと楽になったわ」 「ちょっとだけですか」 「ううん、かなり。一人だったらワンワン泣いていたかも」 「泣いてもいいですよ」 「え?」 「ここは誰もいないし、思いっきり泣いたらいい。僕の背中、貸します」  そう言ってキースはクルリと背を向けた。 (やだなあ、優しくされたら涙腺が……)  ナターシャはキースの背中におでこをつけ、しばらく静かに泣いた。涙がこぼれるたびに、辛く惨めな気持ちが減っていくような気がした。 「……グスッ」 (しまった、また鼻が……)  するとキースが後ろに手を回してハンカチを渡してきた。 「まだハンカチ持ってたの……?」 「これでお終いです。使って下さい」 「グスッ、ありがとう……あなたってヘンな人ね……」  ナターシャは鼻をすすりながら笑った。キースがいてくれて良かった、と思った。 「三枚とも、綺麗に洗濯して返すわ」 「いつでもいいですよ。家にはまだたくさんありますから」 「……どれだけ持ってるの」  二人は顔を見合わせて笑い合った。
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