300人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
5(ホリー視点)
(やったわ。ついに、ナターシャの鼻をあかしてやった)
ホリー・ローデンはその夜自分の部屋で勝利を噛み締めていた。
(ディーンが『やあ、ホリー』って言った時のナターシャの顔ったら。いい気味ね)
ホリーはずっと、ナターシャにコンプレックスを抱いていた。
同じ男爵令嬢でありながら明るいナターシャはマリアンヌ達にも可愛がられている。一方ホリーは口下手で、クラスの輪の中では一言も発言が出来ない。次第に、皆ホリーには意見を求めなくなった。
(私だって、二人きりならちゃんと話せるのに。ナターシャがもっと、私の良さをみんなに伝えてくれればいいのに)
ホリーは自分で発信しようとはせず、ナターシャに引き立てててもらうことばかり考えていた。
(ナターシャは勉強が出来るんだから、テストの答えを見せるぐらいしてくれたらいいのに)
(委員会の仕事も、私だってやりさえすればみんなが驚くくらい完璧に出来るのに、誰も推薦してくれない。ナターシャが私を推薦しないからだわ)
(ディーンがいつも声を掛けてくる時に私も紹介してくれたらいいのに、自分ばかり話して。モテるアピールが鬱陶しいわ)
(ああ、上位貴族に生まれたかった。そしたらナターシャなんかと一緒にいなくて済むのに。マリアンヌ達と優雅に微笑んで過ごすことが出来たはず。二人でいるからいつも比べられて、嫌になるわ)
一緒にいたくなくて学校はしょっちゅうサボった。クラスで孤立させようという意図もあったのだが皮肉なことにホリーが休めば休むほどナターシャとマリアンヌ達が仲良くなっていった。
ホリーは誰とも仲良くなれないまま卒業の時期を迎えた。もちろんパートナーもいない。
パートナーが決まっていないのは女子ではナターシャとホリーだけだ。
(きっとディーンはもうすぐナターシャに申し込むだろう。そしたらパートナーがいないのは私だけ。そんな惨めなことは嫌だ)
最初のコメントを投稿しよう!