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翌日からホリーは学校に出てこなくなった。
といっても、それは卒業間近の三年生にはよくあることだ。特に令嬢達はパーティーの準備に余念がない。ドレスの仕上げ、髪型の研究、肌の手入れなどなど、やることは山積みなのだ。クラスの女子も半分くらいは既に来ていない。
「ナターシャ、今日ランチを一緒に取りませんこと?」
「マリアンヌ様! よろしいんですか?」
「ええ。ホリーも来なくなったでしょう。だからあなたをお誘いしても構わないかと思って」
「ありがとうございます! 嬉しいです」
マリアンヌ達上位貴族は、カフェテリアの中でも広くていい席が確保されている。ランチも自分で取る形式ではなく、ちゃんと給仕がいて運んできてくれるのだ。
「ねえナターシャ。前に言っていた気になる方とはその後どうなったのかしら」
いきなり直球で質問された。
「あ……それはですね、失恋しました」
「まあ。見る目のない男性だこと」
「いえ、私の方が何か無神経なことをしていたんだと思うんです。二度と関わらないでくれって言われてしまいました」
「何てこと言うのかしら。私、文句言ってやりますわ」
「そんな、マリアンヌ様。お気持ちだけありがたく受け取っておきます」
「でもそれじゃあ、パートナーはどうするの?」
「兄に頼みました。嫌がってましたけど」
「そうなの? 見つからなかったら、私の弟を貸そうと思っていたんだけど」
「マリアンヌ様、弟様がいらしたんですか?」
「ええ。兄がいるのは知ってるでしょう? 実は弟もいるのよ。本当に可愛い弟なの。あの子には、あなたみたいな子と付き合ってもらいたいのよね」
(まあ! マリアンヌ様にそんなこと言われて嬉しすぎるけど)
「ありがとうございます。でも公爵家の方をパートナーに貸していただくなんて、もったいないお話ですわ。私なんか兄で充分です」
「そう? 気が変わったらいつでも言って頂戴ね」
マリアンヌは優雅に微笑んでお茶を口にした。
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