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「ところで、ホリーの事なんだけど」 「はい。ホリーが何か?」 「三年間、ほとんど話したこともなかったのに、突然私の屋敷を訪ねてきたのよ。約束も無しでマナー違反ではあるけれど、あの大人しいホリーが来たのだからと会うことにしたんだけれど……」  マリアンヌは静かにティーカップを置いた。 「あなたの悪口を言うのよ。いつも自分をバカにして押さえつけ、喋らせないようにしてきたって。それで、今までクラスの人達とお話し出来なかった。でもこれからは、ナターシャではなく自分と仲良くして欲しいと」  ナターシャは唖然として何も言えなかった。ホリーには自分はそんな風に映っていたのかとショックだったのだ。 「でね。私はこう言ったのよ。『私は自分の付き合う人は自分で決めます。少なくとも、あなたとは仲良くしようとは思いません』とね。そうしたらすぐ帰って行ったわ」 「マリアンヌ様……」 「私はあなたと三年間付き合ってきて、信頼に足る人だとわかっています。だから他人から何か吹き込まれたとしても信用しないわ。そうでしょう?」 「ありがとうございます。本当に嬉しいです……」  涙で目の前のマリアンヌがぼやけて見えない。マリアンヌはそっとナターシャの手を握った。 「ねえナターシャ。あなたにお願いがあるのよ。私はいずれ王宮に召されるわ。その時、私付きの侍女として付いてきてくれないかしら」 「ええっ? 私が、ですか?」 「そうよ。あなたの成績が優秀なのも知っているし、身のこなしもテキパキしていてそつがないわ。仕事が出来て心を許せる人を身近に置いておきたいの。今すぐじゃなくてもいいから返事を聞かせてくれる?」  ナターシャはあまりに突然の話に感激していた。 「はい! 親とも相談して、お返事させていただきます」  と返事をしたが、心の中ではもう承諾することを決めていた。
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