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ドレスの準備も終わり、後はパートナーだけ。卒業パーティーまでひと月を切ってしまった。
そんなある日、ナターシャは学校代表としてマリアンヌと共に孤児院への慰問に行くことになった。
「明るいナターシャがいると子供たちも喜ぶから」
マリアンヌがそう推薦してくれたのだ。
未来の王太子妃から直々のご指名とあって、ナターシャは誇らしさで胸がいっぱいである。当日は学校を公休扱いで休み、二人で朝から三ケ所の孤児院を回った。
「マリアンヌ様、お菓子をとっても喜んでいましたね、子供たち」
「そうね。ナターシャの紙芝居も良かったわよ」
「それを言うならマリアンヌ様の歌だって! とっても伸びやかで素晴らしかったです。あまりに美しい歌声なので伴奏する手が震えてしまいました」
「まあ、ナターシャったら」
扇子で顔を隠しながらコロコロと楽しそうにマリアンヌは笑った。
(ああ、ホントに素敵な方だわ。同じ歳と思えないくらいマナーも気配りも完璧で)
「ところでナターシャ、まだパートナーが決まっていないんですって?」
「はい、そうなんです」
「どなたか想う方がいらっしゃるの?」
ナターシャはポッと頬を染めた。
「いいな、と思ってる方はいます」
「そう。その方に申し込んでもらえそう?」
「……わかりません。ずっとヤキモキしてるんですけど。いっそ、自分から言っちゃおうかと思ったりしてます」
「まあ」
マリアンヌはまた楽しそうに笑った。
「あなたらしくていいわね。それを受け入れてくれるような方があなたには似合うわ」
(私らしい、か……。確かにそうかも。申し込んでくれないかな、なんて待っていないで行動してみようかしら)
マリアンヌとの会話でナターシャは決意を固めた。
(振られたってどうせあとひと月で卒業なんだもの。恥ずかしいけど思い切って告白してみよう!)
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