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「ナターシャ、中庭のベンチでお話しましょうか」
授業が終わるとホリーが言った。
回廊の形になった校舎に囲まれ美しく整えられた中庭は、ベンチがいくつか据えられており生徒の憩いの場になっていた。
その分、どの校舎からも見える位置にある訳だから、泣いてしまわないように気をつけなければとナターシャは気を引き締めた。
ホリーは噴水の見えるベンチに座って、話し始めた。
「ごめんね、ナターシャ。あなたがディーンのことを好きだって知っていたのに、こんなことになってしまって」
「ううん、謝ったりしなくていいのよ。むしろ私の方こそ、ホリーがディーンを好きだとは知らずに自分の相談ばかりしてごめんなさい。いつからディーンを好きだったの?」
「彼はいつもカフェでナターシャに声を掛けていたわね。ずっと、素敵な人だなあって思って見ていたの。でも友達の好きな人だから諦めなきゃ、応援しなきゃって思ってて。そしたら昨日、ナターシャが孤児院へ慰問に行くので休みだったでしょう? 一人で昼食を取っていた私にディーンが話し掛けてくれて……」
ホリーは一旦言葉を切って、深く息を吸った。
「……私のことが前から気になっていたって言ってくれたの。あまりにも突然で、でも嬉しかった。卒業パーティーのパートナーも申し込んでくれたから、お受けしてしまったのよ。あなたの気持ちも考えずに、本当にごめんなさい」
ホリーは手で顔を覆い、俯いて泣き始めた。
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