3

3/4
301人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「ナターシャ、中庭のベンチでお話しましょうか」  授業が終わるとホリーが言った。  回廊の形になった校舎に囲まれ美しく整えられた中庭は、ベンチがいくつか据えられており生徒の憩いの場になっていた。  その分、どの校舎からも見える位置にある訳だから、泣いてしまわないように気をつけなければとナターシャは気を引き締めた。  ホリーは噴水の見えるベンチに座って、話し始めた。 「ごめんね、ナターシャ。あなたがディーンのことを好きだって知っていたのに、こんなことになってしまって」 「ううん、謝ったりしなくていいのよ。むしろ私の方こそ、ホリーがディーンを好きだとは知らずに自分の相談ばかりしてごめんなさい。いつからディーンを好きだったの?」 「彼はいつもカフェでナターシャに声を掛けていたわね。ずっと、素敵な人だなあって思って見ていたの。でも友達の好きな人だから諦めなきゃ、応援しなきゃって思ってて。そしたら昨日、ナターシャが孤児院へ慰問に行くので休みだったでしょう? 一人で昼食を取っていた私にディーンが話し掛けてくれて……」  ホリーは一旦言葉を切って、深く息を吸った。 「……私のことが前から気になっていたって言ってくれたの。あまりにも突然で、でも嬉しかった。卒業パーティーのパートナーも申し込んでくれたから、お受けしてしまったのよ。あなたの気持ちも考えずに、本当にごめんなさい」  ホリーは手で顔を覆い、俯いて泣き始めた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!