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〇月△日
私は決心した。あの大蛇の化物を、永遠に封印することを。
最後に目に焼き付けるため、そして妻の墓に寄るため、慣れ親しんだ村に戻った。
米と野菜のみのささやかな料理で、娘と最後の食事をとった。
妻に詫びながら、墓を掘り起こし、妻の骨を入手した。
娘を生贄に捧げ、私が奴を封じる。だが、娘を一人にはさせない。
文献には、生贄が多いほど、封印の力も強まるとあった。
私も一緒に生贄となろう。寂しい思いはさせないからな。
この後、神殿でナリカンダラを封印する。
まず、我が娘マーシャの血の力で奴を呼び寄せる。
奴を封じるまじないを込めた箱に閉じこめるのだ。
閉じ込めたら、妻の骨を使い、鍵となるまじないをかける。
つまり、箱の内からは娘が、外からは妻が奴を封印するのだ。
そして、最後に私の命を使い、外の封印を補強する。
完全な封印は叶わないまでも、アマツテラスの力で神殿の外には出られなくなるはずだ。
この日記は、万が一のためにこの村に隠しておくことにする。
もし、私たちの封印が失敗してしまったら。
私たちの封印が解けてしまったら。
どうか、私に代わって奴を封じてほしい。
勝手を言ってすまない。私たちの後始末を押し付けてすまない。
私のためとは言わない。どうか、犠牲になった者たちのために、そしてこの世に生きる者たちのために、世界を守ってほしい。
後の世を生きる者がこの日記を見つけ、彼らの力になることを切に願う。
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