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晃司は目を擦って何度も見返した。
本物のお金として使える? 仮想空間の中で稼いだ金を、現実の世界で? いや、ありえないだろ……。
ゲームをやった経験があれば、誰しも一度は考えるであろう妄想。モンスターを倒して金が稼げたら。ゲームの中の金で買い物ができたら。
……そう、妄想だ。ありえない。しかも、普通に買ったら何万円も取られそうな新型のデバイスを、応募者全員に送る? そんな気前のいい話があるはずがない。間違いなく詐欺だ。装置を受け取ったとたん、何だかんだと理由をつけて金をむしり取られるに違いない。どこがこんな怪しい広告を出しているのかと画面の一番下までスクロールしてみると、そこに書いてあったのは、経済に疎い晃司でも知っている有名なメーカーだった。
まじ? こんなでかい会社が宣伝してるなんて。
組織が大きくなればなるほど、コンプライアンスやプライバシーポリシーの遵守が求められ、監視の目も厳しくなる。虚偽広告や詐欺のような悪質なことをすれば、すぐに新聞沙汰になって、下手をすれば倒産だ。そんな大企業があからさまな詐欺をするわけがない。そのような心理が働き、晃司は疑う感情より信用の感情が勝り始めた。
最寄り駅に到着し、迷いは一時中断した。
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