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「おはよう、トイトイ。あなたが無事に目覚めてくれて、またこうしてお話し出来る日が来るなんて……」
目が覚めたら、ぼくは広々とした、地面と空以外何もないような場所にいた。ティッサの手のひらの上に乗っかって横になっていたみたい。
ティッサが声をかけてくれたから、ぼくは身を起こす。彼女の顔を見る。
「私を追いかけさせてしまったのよね。ごめんね。あなたに生きていて欲しかったけど……こうしてあなたと一緒にいられて、また、お喋り出来ると思うとね……本当のことを言うと、私は嬉しいわ」
彼女は申し訳なさそうに眉を下げているけど、確かに、微笑んでいた。ぼくといられることが嬉しいって。
ぼくは、涙を流して泣いていて、なんにも答えることが出来なかった。
「こ、ここ、は? 天国?」
かろうじて、それを言うだけで、精いっぱい。
「そうかも。トイトイは見たことがないだろうけど、ここはフィラディノートの街の外にある草原に似ているわ」
足元を見たら、確かに緑色の何かで地面が覆われていて、土すらよく見えない。
「これからはフィラディノートの外でだって、どこででもトイトイとお話出来るわね。どこまでも一緒に行きましょう? この、夢の世界が終わる日まで」
「……う、ん……っ」
ティッサ・ミュアの作品としてこの世に残って欲しいっていう彼女の願いを踏みにじって、後を追いかけて。そうだとしても、生きていた頃のぼくには、涙を流すことも、ティッサと旅をすることだって出来なかったんだ。
そのどちらも出来るようになったのだから、ぼくは何の後悔もなかった。世界一幸せな、彼女の為だけの作品でいることを選んだ、その結末に。
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