トイトイのきょうだい

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 その「トイトイ」を求めてくれるお客さんが現れてそれを作るっていうのは、ティッサにとって光栄なことではないんだろうか。想像しようとしても、ぼくにはちっともわからないんだ。 「まさか。私にとってトイトイはいっちばん大事な作品だから、欲しいって言ってくれる人がいるっていうのは本当に嬉しいし、作業だって楽しみよ?」 「だったら、何を思ってそんな顔してるのさ」 「本当はね……私にトイトイがいるように、お客さんの希望する『世界でひとつ、その人のためだけの人形』を受注して作るのが、私の夢なのよ。でもまだまだ、お客さんの望みを完璧に再現した人形を作れる技術も自信も、私にはなくってね……」 「そうだったんだ……」  フィオ君が気に入ってくれたトイトイをもうひとつ作るんじゃなく、例えばフィオ君自身に「こんな人形が欲しい」って絵でも描いてもらって、同じ人形を作る。それが、ティッサの夢のひとつだったんだね。 「その夢も、いつか叶うといいね」 「そうねぇ~……だけど、『自分が好きだから』で作るのと、『より多くの人が求めるから』でものを作るのって、これがまた難しくってねぇ~……」  なんだか微妙に、さっき言ってた話とずれちゃった? 個人の受注の話から、自分の好きなものが売れ筋じゃない悩みの方向に変わってる気がする。それだけ、何かを作る人間の悩みは種類が豊富ってことなのかも。  ぼくは作られる側の立場で、多くの人に見られたいなんて願望ないからぜーんぜん関係ない、気楽な立場。そりゃあ、たくさんのお客さんが遊んでくれるのだって楽しんでるけど、極論を言えばぼくを見てくれるのがティッサひとりだけだとしても、それはそれでおもちゃにとっては幸せなことだよ。  フィオ君がこれから暮らすノエリアックでもうひとりのトイトイをぼくみたいに話せるようにするためには、ティッサも一度現地に行ってそこの魔力溜まりを調べて必要な紋を刻まなければならない。当然、出張費用も必要な旅費も、かかる経費は全てフィオ君のご両親が負担してくれる約束になっている。数日かけてぼくと全く同じトイトイの人形を作って、それを持ってティッサは旅立った。  ぼくはといえば、無理にティッサについていったところで、フィラディノートを出た瞬間には動けないただの人形になってしまう。つまり同行する意味もないので、留守番してお店を守ることにした。ティッサの留守中も作業台を使いたいお客さんもおもちゃで遊びたい子供達も、売り場のおもちゃを買ってくれるお客さんもいた。ぼくがお店を開けることでちゃーんと売り上げに結び付いたので、ぼくは大満足だった。
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