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「そんなことないですよぉ。そもそも、あたし達にとって全ての創作物に優劣なんかないですし。世の中に出そうとして実際に出た! それだけで平等! あなたのお師匠様であられる大賢者ミモリ・クリングル様の理念だってそうでしょう?」
「はぁ、平等……そうですねぇ」
笑っちゃ悪いんだけど、ミモリ様と直接の面識のないへれるさんの方が、ミモリ様の教えを意識しているっていうのはちょっと面白い。それだけ、ティッサもそんなに深くは、ミモリ様の教えに触れてないって証左でもある。
「職人街のお客さん達にも街頭取材させていただいたんですけど、トイトイさん、この辺の方々に人気じゃないですか」
「たくさんの人達の思い出になってるみたいですよ」
「そ、そうなんですか? 事実なら、それは素直に嬉しいですね」
「ぼくも! 嬉しいです!」
「あっ、これはかわいい」
「反応してくれる芸術品、人気あるのわかります」
ぼくが動いて話したのを見て、ふたりは納得顔でうんうん頷いている。
「そうおっしゃってくださるなら、うちの子も是非、本に載せてやってくださいますか」
「もちろん、喜んで! こちらこそありがとうございます!」
「さっそく描かせていただきますね!」
職人街の全ての店を訪ねて絵まで描く。どれだけ時間をかけるつもりなんだろうと思ったけど、のるんさんが絵を描くスピードはものすごかった。ほんの数分でぼくそっくりの絵を描き上げて、色までついている。
「ありがとうございましたー!」
「完成した本は送らせていただきますので、楽しみにしていてくださいねー!」
大満足の顔で大きく手を振って、ふたりは店を後にした。
本が届いたのは四か月後のことだった。せっかくだからティッサ自身のための一冊だけじゃなく、売り場に置くためにおまけで五冊ほど貰うことはあらかじめ約束してあった。
ティッサが作業台の上で本を広げて、ぼくも一緒にそれを見た。
「ほら、トイトイが載ってるよ」
のるんさんが描いた絵には色がついていたけど、本のための印刷には白と黒しか使えない。のるんさん達が家に帰ってから黒インクで、本のための原稿に清書したんだろう。黒髪に真っ白い肌のぼく、普段と違った印象があって面白い。
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