はじめに

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はじめに

 令和の時代、「プチ整形」どころか「ガッツリ整形」もそれほど気にされない世の中に大きく変わった。わざわざ「整形大国」まで出向いて、整形のダウンタイムをひたすら耐えて、流行病のある意味好都合により、マスクで顔を隠して帰国ができるし、人気美容整形外科医がYouTubeで丁寧に説明してくれたり、「整形をすることはもはや特別なことではない」という風潮が根付いている。  さて時代は大きく遡り、平成4年3月、今から約30年前のことだ。  私は子どもの頃からの強いコンレックスだった「鼻」を整形したのだ。  私の「鼻」は付け根が低く、団子っ鼻でしかも上向きという残念な形状だった。幼少期はそんなことを気にしたこともなく、明るくやんちゃな子どもだった。  そんなある日、「あいつ、鼻がブタだ!ブスー!」と、全く知らない他学年の男の子に指を差されたのである。数人のクラスメイトとゴム跳びをして遊んでいた小学3年生の私でも、明らかに私を特定して言うものだから、自分のことだとすぐわかった。あまりに衝撃的すぎて、あの日の光景を今でも鮮明に覚えている。俯瞰で撮られているその光景を、脳内で再生できるくらいだ。  まるで冷たい水を全身にぶっかけられたかのような驚きと共に、強い羞恥心により鼓動が激しくなった。そしてジワジワと悲しい気持ちが襲ってきた。  一緒に遊んでいた女の子たちが、気まずそうにしているのも申し訳なくて、ただただ自分が情けなくたまらなかった。  「そうか私はブタ、そしてブスなんだ」    それまでの私は、自分の容姿についてそこまで深く考えたこともなかったと思う。でも薄々気付いていたのかもしれない。それはあくまで「なんとなく」であり、確定されたことではなかった。  古き良き昭和の時代、平和で呑気な9歳の私は、初めて「自分がブスな女の子なんだ、ブスというのは恥ずかしいことなんだ」と知った。  当然その日以来、自分の顔を鏡で見ることが増えていく。  
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