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鼻はステータスシンボル
いつ「そんなこと」を知ったのかはよくわからない。なぜか我が家には「美容整形」についての本があった。もしかしたら、悩んでいる私を見かねて母親が買ったのかもしれない。
その本に「鼻はステータスシンボル」という衝撃な一文が載っていたのだった。
「鼻はステータスシンボル」というのは「顔のパーツの中で真ん中に位置し、最も目立つ、そして重要な印象がある」ということである。
今の時代でそんな言葉を発したら、とんでもないハラスメントになるだろう。顔立ちの中で「鼻」がその人の美のレベルをあらわす、みたいな意味合いにも感じるからだ。
その言葉を真に受けた私は、「真ん中にあるこの醜いモノ、どうして私はこんな鼻で生まれたんだろう」と随分と悩み出した。
母親の鼻は、私とは違いそこそこ整っていた。「美人顔」であり周囲からも評判だった女性だ。1歳下の弟も私とは違う。母親に似ていて、けして私のように小鼻が広がったりしていない。
では?
なるほど、父親の鼻が一番近い。それでも父のそれは私ほど低くはない。確かに鼻の穴が上向きではあるけれど、これまた微妙に違うのである。
鼻のことを指摘されて以来、すっかり落ち込んでしまった私は、元気ではつらつとした少女から、大人しくウジウジした子へ変わっていた。
友だちの顔を見る時、まず「鼻」の形に目がいってしまう。私からすると、ほとんどの人が鼻には何も問題がないように感じた。
なぜだか自分だけ、特別に恐ろしいほど形が悪い、と思うばかりだったのだ。
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