第二王子からの溺愛に気づいていない幽閉聖女は追放されたい

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◆  自由になりたい、と聖女フルールは願ってやまない。 「塔から追放されたわたしは、ここではない国で普通の人間として自由に暮らすの。野菜を育てたり、川で魚を釣ったりして」 「ありえない。君が塔の外へ出たら何が起きるか分かっているだろう?」  神官服に身を包んだ青髪の男性は、苦虫を噛み潰したような表情になった。 「最後まで聞いてちょうだい。話には続きがあるの」 「……聞くだけ聞こう」 「無能だという烙印を押されて追放された勇者の物語が、今、国民の間で流行っているんでしょう。わたしもそうやって追放されたりしないかしら、って想像してみただけ」 「追放されることは永久にない。君はまさしくこの国の聖女だ」  フルールは子どものように頬を膨らませた。  波打つ金髪、澄んだ青い瞳、透き通った白い肌。  グレーパープルのふんわりとしたワンピースから覗く手足は細く、17歳という年齢よりはるかに幼く見える。  そんな彼女は美しい容姿だけではなく、巨大な魔力を有していた。  『間もなくこの王国に聖女が誕生する。彼女の魔力を保護することにより、王国にますます繁栄がもたらされるであろう』  ――それは17年前、神官が受けた神託。  王国の外れで生まれたフルールはすぐさま見つけられ、そのときから王家の庇護を受けて育ってきた。  王城内に建つ、白い塔。  聖女フルールはその最上階で暮らしている。
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