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「楽しいわ、これ。やってみる!」
「やる気になってもらえて安心した。万が一そんなことやってられないと匙を投げられようものなら、神殿へ企画を通すのに時間を要した作業が水の泡だからな」
「……もしかして、わたしのために?」
「勘違いするな。君が自由になりたいと繰り返すのは、暇を持て余しているからだという私の判断だ」
アレクサンドルは少しも表情を変えない。
(いつも、そう。わたしのためになることを考えてくれる。決して認めようとはしないけれど……)
アレクサンドルの名を汚す訳にはいかない。
フルールは、胸を張って宣言する。
「聖女人生始まって以来の大仕事だもの。皆に喜んでもらえるよう、がんばるわ!」
◆
――その数日後。
「すごいな。もうできたのか」
箱いっぱいの虹色に変化したキューブを見た、神官アレクサンドルの第一声である。
キューブはどれも美しい煌めきを放っている。
「ひとつずつ心を込めて仕上げたわ。誰かのために祈る、すごく楽しい仕事だった。受け取った人には神の加護があるわ」
「よくやってくれた。ありがとう」
ぽん、とアレクサンドルがフルールの頭に手を置いた。
反射的にフルールの頬は朱に染まる。
「ち、ちょっと、いきなり何!? 子ども扱いしないでよ」
アレクサンドルは、フルールが大声を上げたことに面食らったようだった。
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