「教えないよ」

1/3
前へ
/35ページ
次へ

「教えないよ」

『ピピピピ』 一定のリズムが鳴り響く。 重いまぶたを持ち上げれば、いつもの景色がある。 上半身を起こすと、布団の上に水滴が落ちてきた。 頬を伝っている"なにか"を感じる。 さっき落ちてきた水滴が、涙だったと気づいたのはその時だった。 私は泣いていた。 きっと、昨夜見たあの夢のせいだろう。 あの日のことは鮮明に覚えてる。 はっきりしすぎて今でも、あの日に戻ったかのように思い出す。 朝起きて、気づけば泣いている。 あの夢を見た時はいつもこうだ。 そして、あの夢を見るのはいつも冬だ。 あの日も、今日と同じ静かに雪が降る日だった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加