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静かな病室、点滴が落ちる音が聞こえる。
あの事故から約4週間が経った。
一命はとりとめたものの、頭を強く打ってしまっているらしい。
だから、脳の一部が機能しなくなっているらしく、
「この病院では手術はできない」と言われた。
そういう理由で明日、医大の病院に移動させられる。
その病院は受け入れてはくれたものの、
「成功するかは分からない」そう言われた。
それは、言い方を変えれば「失敗するかもしれない」そういう意味だろう。
来月、私は生きていられるのだろうか、、、
『トントン』
そんな事を考えていると、この静かな空気を裂くように扉を叩く音がした。
この時は、親か先生か、看護師の人だろうと思っていた。
でも違った。
扉の先にいたのは今、1番会いたくなくて、1番会いたい人だった。
「はぁ、、、はぁ、、風花、、」
なぜか、息を切らしていた。
多分走ってきたのだろう。
自分から「別れよう」と言い、「もう一緒にいたくない」と言った彼が、なぜ目の前にいるのか分からなかった。
「、、、なんで」
「あの、、移動するって聞いたから。病院、、、」
どうして、彼がこのことを知っているのだろう。
私は、親にしかこのことを言っていないのに。
彼には、知られたくなかったのに。
「なんで、、、知ってるの」
「風花の母さんとさっき会って、教えてもらった」
なんで、そんな余計なことを、、、
そう思った。
私も、お母さんに彼にはこのことを言わないでって言っていなかった。
だって、あんな別れ方をしたのに彼が来てくれるなんて、思ってもいなかったから。
そしたら彼が
「どこに移るの」
そう、いつもの優しい口調で聞いてきた。
彼がこんなことを聞いてくるなんて思ってもいなかった。
あの時、一緒にいたくないって言ったのに。
別れようって言ったのは春じゃん。
何言ってんのって思った。
でも、嬉しかった。
もしかしたら、また彼と戻れるかもしれない。
そう思った。
なのに
「教えないよ」
そう言ってしまった。
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