「教えないよ」

3/3
前へ
/35ページ
次へ
きっと、自分の中でどこか意地になっている所があったんだろう。 そして、彼の顔を見ていると大好きだった日々を思い出して、泣いてしまいそうで。 だから、素直になれなかった。 「え、、、教えてくれなきゃ会えないよ、、」 「っ、、、、」 彼は、これからも会おうとしてくれている。 これからも、彼に会えるかもしれない。 そう思うと目が熱くなって、ずっと我慢していた涙が溢れそうで、 だから、それを隠すように言ってしまった。 「春が、もう一緒にいたくないって言ったんでしょ。だったら、これを機にちゃんと別れようよ」 「!それは、、ちがっ、、、」 彼がなにか言い欠けていた。 でも、心にも思っていないことを言ったせいか、それとも心が我慢の限界だったのか、涙が溢れちゃって。 もう、どうしたらいいか分からなくなり、レースカーテンを閉めてしまった。 その数秒後、彼の「ごめんね」の一言と扉が閉まる音が静かな部屋に響いた。 その後、私は自分でも分からなくなるくらい泣いた。涙が止まらなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー あの時、彼にどこに行くか教えていれば、もっと素直になっていれば、 「ごめんね」って言えていればこんな事にはならなかったのかな。 私はいつもそうだ。 肝心なときに素直になれない。 そして、後から涙を流し後悔する。 もし、あの時に戻れたらちゃんと言えるかな。 ちゃんと素直になれるかな。 それとも、また泣いちゃって言葉にもできないかな。 でも、1つでも言っていれば未来は変わっていたのかもしれないのに。 なんて、戻れないって分かっているのに今でも、"もし"や"たられば"を繰り返している。 そんな私は、もう嫌で大嫌いだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加