それぐらいの覚悟だから

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「あの、今までお世話になりました」 「え?」 今、課長に退職願を出した。 課長は、一瞬僕をを見て止まった気がした。 少し長めの沈黙が二人に間に流れる。 「えっと、、、なんでかな?」 「理由はいえません。でも、このとおりです」 「いや、ちょっとまってくれ。ただでさえ最近人手が少ないんだから、東雲くんにいてもらわないと困るよ」 「すいません。それはできません」 「いや、、でも、、」 「今まで、お世話になりました」 そう言い、深く聞かれないうちに課長の席から離れ、自分の席に戻った。 今日中に荷物を全部まとめて、会社を出よう。 そう思い、デスクの上にあるものを片っ端からカバンの中に詰めていく。 その時だった。 「春先輩、会社辞めちゃうんですか?」 あの子が、驚いたような顔をして寄ってきた。 「うん」 「え?なんでですか、、、そんな」 「うん。理由があるから」 「私ですか?私が、、、その迷惑でしたか?」 「違うよ。紀乃さんのせいじゃないよ。会いたい人がいるから」 「え?」 「それが理由」 「好きな、、、人ですか?」 「うん。もう1度会いたくて」 「会えるといいですね」 あの子は笑顔で、そう言ってくれた。 もう1度、彼女に会いたい。 「ごめん」って言いたい。 「本当はあんな事思ってなかった、全部八つ当たりだった。風花のせいじゃない」って。 あの時、言えなかった、言うことができなかったこの言葉を伝えたい。 それから、片付けを済まして午後会社を出れた。 彼女を傷つけてまで入った会社だったのに。 そう思って、今まで辞めずに続けてきた。 どんなに残業をしても、どんなに仕事を押し付けられても。 そんな会社を、さっきやめた。 もう、なんの後悔なんてない。 自分でも馬鹿なことをしてるのは、分かってる。 もう、戻れないかもしれないのも全部分かってる。 でも、彼女にもう1度会えるのなら仕事だってやめられる。 それぐらい、彼女に会いたい。 もう1度言いたい。 前の関係に戻れなくてもいい、もう1度彼女の笑顔が見れるのなら、 会えるのなら___
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