本音を吐き出すように

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本音を吐き出すように

「よぉ、久しぶり。春」 「うん。久しぶり」 「お!なんか顔色明るくなってんじゃん?」 「うん。ちょっと吹っ切れた感じ」 「はは。仕事辞めたから?」 「まぁ、それもあるけど、覚悟ができたからかな」 「あ〜。元カノさんに会いにいくの?」 「うん。会えるか分かんないけど」 「頑張れよ」 そう言い、蒼は肩を叩いてきた。 蒼は、高校時代の友達で、大学も一緒だった。 就職してる会社は違うけど、、、 本当は、蒼と同じ会社に入りたかったけど、就職試験で落ちた。 もしかしたら、それが大きな理由だったのかもしれない。 落ち着いてから、そう思った。 蒼とは、友達でライバルでもあったから。 だからどうしても、落ちたことは悔しかった。 その、落ちたことを知ったのはあの日の前日だった。 蒼とは、よく飲みに行っていた。 僕がやっと、就職できたときも。 彼女と、別れたときも。 でも、殆どが僕が落ち込んでいるときだった。 酒を飲んで、本音を全部吐き出した。 それを、蒼は何も言わず、嫌な顔1つせず、聞いてくれた。 だから、彼とは"親友"といってもいい関係だと思う。 まぁ、僕が勝手にそう思っているんだけど。 今は、いつもの居酒屋の前にいる。 蒼が僕の退職祝いにって、呼んでくれた。 この理由での退職祝いは、 嬉しいような嬉しくないようななんとも言えない感じだったけど、久しぶりに蒼と飲めるのは嬉しかった。 久しぶりに、嬉しいことで飲めそうだった。 そう思い二人でドアを開けて、のれんをくぐるといつも匂いがした。 甘じょっぱいタレの香りと、お酒の匂い。 そして、楽しそうに喋るサラリーマンの人達。 本当に久しぶりだ。 「久しぶりだな」 「うん。久しぶり」 「いつもの席座る?」 「そうだね」 そして、僕達はいつもの席に座った。 カウンターの一番端から、3番目の席。 この席は1番、壁に貼ったメニューが見やすい。 そんな理由だった。 注文するものはいつも一緒だ。 「ビール2と、塩とタレのセット2つ」 「了解」
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