風凪

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風凪

 探しさがし辿り着いた  ここがわたしの理想郷(まほろば)  泣いたのは 月のせい  こよなき月が眩し過ぎたから 草花(そうくわ)静寂にして、銀杏(いちょう)を揺らした風は止んでいた。しかしそこに、先程までの暖かい陽光はない。枝に佇む鳥たちは知っているのだ、虚ろな秋空を。風凪(かざなぎ)の、暫し異様な静けさは、いずれ嵐となる前触れなのだということを。 故に、じっと(とど)まるのだ。 風凪…… 女はその一瞬に、魂の宿り木を想い、男は人生の安らぎを見た。二人に、どう結末を知ることが出来ようか。 神の悪戯(いたずら)か、この世に生を受けた時からの運命(さだめ)だったのか。 もしあの日、どちらかが前を横切らねば、 二人の人生の方向は別だったかもしれぬ。
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