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「きゃーーーーーーーーーーーー!!!!」
がたんっ
慌ててドアを閉める。
やってしまった…………
七瀬いたのか………
「なにごと!!」
「侵入者か!!」
若いもんが来て、俺を見てぽかんとする。
「若……?こんなところで何を……?」
「いや、タイミングが悪かっただけだ。気にするな(?)」
「お怪我はございませんか、若」
「ああ、無傷だ。このとおり」
そう言うと険しかった若いもんの顔が綻んだ。
「今日はいよいよ、お嬢のお披露目会でございますな」
「こちらの準備は整っております」
「ああ、ありがとう」
「さあ、若もはやくお着替えなさいませ」
「はいはい」
若いもんの方が張り切っている。
…まあ、楽しそうだからいいか。
スーツを着る。若のおめでたい日だから、と言って、若いもんがわざわざ用意したものだ。
「旦那さま~!!」
りやだ。
とてとてと、転けないように気をつけつつ走りよってくる。
可愛い。
可愛さで死にそう。
りやは、レースが特徴的な白いドレスを着ていた。
「旦那さま!」
りやが少し不思議そうな、でも嬉しそうな顔をしている。
「りや……」
可愛い。
「若!!」
七瀬だ。
…あ、ちょっと威嚇してる。
猫か。
「さっきはごめん………」
「いや、事故なんで仕方ないんですけど」
と膨れ顔をしてみせるが、りやを見て顔が綻ぶ。
「りやお嬢………素敵です」
七瀬は嬉しそうに目を細めた。
つられてりやもはにかむ。
「りや……似合ってる」
そう言うと、りやは照れたように笑った。
「若、お嬢、準備は出来ております」
「どうぞこちらへ」
と言って俺たちを大広間へと連れていく。
気づいたら七瀬がいなくなっている。
早いな。
俺はりやの手を引く。
りやは俺の手を握り返した。
階段を上がり、大広間に入るドアを開けた。
若い衆が姿勢を正して座っている。
俺はりやの方をちらっと見た。
驚いてはいるが、怯えている様子はない。
りやの手を引いて、ゆっくり部屋に入る。
真ん中に構えられた席に着くと、俺たちはそこで婚姻の儀式をし、ささやかな宴を催した。
「若!おめでとうございます」
「ああ、ありがとう」
「あ、ありがとう…………」
若衆が挨拶に来る。
りやは慣れていないからか、少しおどおどしているようだ。
ひとしきり挨拶回りが終わると、俺たちは若衆の余興を楽しみながら、料理を食べた。
りやが鯛めしを口に運ぶ。
すぐにりやの顔がぱっと明るくなった。
「美味しい?」
「うん!」
りやは幸せそうに頷いた。
その笑顔に、鼓動が早くなった。
ずっと、その笑顔を見ていたかった。
俺は決めた。
この命にかえても、俺はりやを守る。
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