the 1st drop

4/11
前へ
/54ページ
次へ
「きゃーーーーーーーーーーーー!!!!」 がたんっ 慌ててドアを閉める。 やってしまった………… 七瀬いたのか……… 「なにごと!!」 「侵入者か!!」 若いもんが来て、俺を見てぽかんとする。 「若……?こんなところで何を……?」 「いや、タイミングが悪かっただけだ。気にするな(?)」 「お怪我はございませんか、若」 「ああ、無傷だ。このとおり」 そう言うと険しかった若いもんの顔が綻んだ。 「今日はいよいよ、お嬢のお披露目会でございますな」 「こちらの準備は整っております」 「ああ、ありがとう」 「さあ、若もはやくお着替えなさいませ」 「はいはい」 若いもんの方が張り切っている。 …まあ、楽しそうだからいいか。 スーツを着る。若のおめでたい日だから、と言って、若いもんがわざわざ用意したものだ。 「旦那さま~!!」 りやだ。 とてとてと、転けないように気をつけつつ走りよってくる。 可愛い。 可愛さで死にそう。 りやは、レースが特徴的な白いドレスを着ていた。 「旦那さま!」 りやが少し不思議そうな、でも嬉しそうな顔をしている。 「りや……」 可愛い。 「若!!」 七瀬だ。 …あ、ちょっと威嚇してる。 猫か。 「さっきはごめん………」 「いや、事故なんで仕方ないんですけど」 と膨れ顔をしてみせるが、りやを見て顔が綻ぶ。 「りやお嬢………素敵です」 七瀬は嬉しそうに目を細めた。 つられてりやもはにかむ。 「りや……似合ってる」 そう言うと、りやは照れたように笑った。 「若、お嬢、準備は出来ております」 「どうぞこちらへ」 と言って俺たちを大広間へと連れていく。 気づいたら七瀬がいなくなっている。 早いな。 俺はりやの手を引く。 りやは俺の手を握り返した。 階段を上がり、大広間に入るドアを開けた。 若い衆が姿勢を正して座っている。 俺はりやの方をちらっと見た。 驚いてはいるが、怯えている様子はない。 りやの手を引いて、ゆっくり部屋に入る。 真ん中に構えられた席に着くと、俺たちはそこで婚姻の儀式をし、ささやかな宴を催した。 「若!おめでとうございます」 「ああ、ありがとう」 「あ、ありがとう…………」 若衆が挨拶に来る。 りやは慣れていないからか、少しおどおどしているようだ。 ひとしきり挨拶回りが終わると、俺たちは若衆の余興を楽しみながら、料理を食べた。 りやが鯛めしを口に運ぶ。 すぐにりやの顔がぱっと明るくなった。 「美味しい?」 「うん!」 りやは幸せそうに頷いた。 その笑顔に、鼓動が早くなった。 ずっと、その笑顔を見ていたかった。 俺は決めた。 この命にかえても、俺はりやを守る。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加