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翌朝。
目を覚ました。
あたりはまだ薄暗い。
「んぅ…ん……………りや起きた?」
隣から心地よい低い声が聞こえる。
旦那さまだ。
「うん」
私は何故か小声で答える。
「そっか。…………ふぁあ」
旦那さまは欠伸をした。
まだ眠いのかな。
「今日は仕事ないのに、ついいつもの時間に起きちゃった」
そう言って眠そうに目をこする。
「ん~…りや、お日様のぼるまで二度寝しよっか」
旦那さまは柔く笑って言った。
「うん」
私も笑って、旦那さまの手をぎゅっと握って、目を閉じた。
「お二人とも、いつまで寝てるんですか。もう8時ですよ」
男の人が起こしにきた。
七瀬もいる。
「うん…………?」
「若、仕事がないとはいえそろそろ起きてください。もう朝飯の支度も出来てるんですよ」
「ああ……………」
旦那さまがむくりと体を起こした。
私も体を起こす。
あたりは既に明るくなっていた。
「あ、そうだ」
寝ぼけながら旦那さまが言った。
「こいつ、蒼井 莉凰ね。俺の世話人」
と言って掴んでいるのは七瀬の肩。
「若、あたしじゃないです」
七瀬が呆れた目で旦那さまを見ている。
その様子が可笑しくて、なんだか笑ってしまう。
「まあ、お嬢が楽しそうだからいいとして…お嬢、私のことは『莉凰』と呼んで、御用がありましたらお使いくださいませ。若、着替えましょう」
莉凰はそう言って、旦那さまをクローゼットの隣のドアの方へと連れていく。
旦那さまが、まだ開いていないドアにぶつかった。
「若、そろそろ起きてください」
莉凰が呆れたように言った。
こんなに素敵な朝ははじめてだ。
「さあ、お嬢も着替えましょうか」
七瀬が言った。
私は、グレーのTシャツにジーンズパンツを合わせて着た。
こんなお洒落な服を着たのもはじめてだ。
がちゃと音がして、扉が開いた。
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