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(春翔くん、来ないな?
ベンチをカップルに譲ったから移動はしたけど、気付かないものかな?)
月海はそんな風に考えていたが、段々と心細くなってきて涙が出てくる。
「うぅ…
みんな何処行っちゃったんだろう…
グスッ」
「もしかして、迷子?」
「え?」
「暗いから危ないよ?
どうしてこんな所に居るんだ?」
「友達に待ってるように言われて…
待ってたんですけど、来なくって」
「…ふぅん?
ほら、着いてきて」
「あ、あの…
お兄さんは着ぐるみで何を?」
「風船配りだけど?
もうすぐバイトは終わりだし、迷子ならセンターに連れていく」
「へ?」
「迷子でしょ?
待ってても来ないなら」
「そ、そうなるんですか?」
「ほら、来て?
すぐ近くにあるから」
「は、はい」
月海は猫の着ぐるみを着た何者かに付いていくと、明るい部屋の中に入った。
「ごめんけど、少し待ってて?
着替えてくるから」
「あ、はい」
月海は近くの椅子に座ると、猫の着ぐるみの主は奥のスタッフルームに着替えに向かった。
(明るいと安心するな…
暗いと不安になるものなのね?)
月海がそんな風に考えていると、着ぐるみを着ていた主はシャワーを軽く浴びて私服に着替えて出てきた。
「ごめんね、待たせた?」
「えっと、どちら様ですか?」
「さっきの着ぐるみの主だけど?」
「あ、私…
有栖川月海です。
助けてくれてありがとうございます」
「ねぇ?
君携帯持ってる?」
「あっ!
電源落としてました」
「フッ
連絡来てるかもな」
月海は携帯の電源を起ち上げると、メールや電話が来ていた。
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