☆1

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(春翔くん、来ないな? ベンチをカップルに譲ったから移動はしたけど、気付かないものかな?) 月海はそんな風に考えていたが、段々と心細くなってきて涙が出てくる。 「うぅ… みんな何処行っちゃったんだろう… グスッ」 「もしかして、迷子?」 「え?」 「暗いから危ないよ? どうしてこんな所に居るんだ?」 「友達に待ってるように言われて… 待ってたんですけど、来なくって」 「…ふぅん? ほら、着いてきて」 「あ、あの… お兄さんは着ぐるみで何を?」 「風船配りだけど? もうすぐバイトは終わりだし、迷子ならセンターに連れていく」 「へ?」 「迷子でしょ? 待ってても来ないなら」 「そ、そうなるんですか?」 「ほら、来て? すぐ近くにあるから」 「は、はい」 月海は猫の着ぐるみを着た何者かに付いていくと、明るい部屋の中に入った。 「ごめんけど、少し待ってて? 着替えてくるから」 「あ、はい」 月海は近くの椅子に座ると、猫の着ぐるみの主は奥のスタッフルームに着替えに向かった。 (明るいと安心するな… 暗いと不安になるものなのね?) 月海がそんな風に考えていると、着ぐるみを着ていた主はシャワーを軽く浴びて私服に着替えて出てきた。 「ごめんね、待たせた?」 「えっと、どちら様ですか?」 「さっきの着ぐるみの主だけど?」 「あ、私… 有栖川月海です。 助けてくれてありがとうございます」 「ねぇ? 君携帯持ってる?」 「あっ! 電源落としてました」 「フッ 連絡来てるかもな」 月海は携帯の電源を起ち上げると、メールや電話が来ていた。
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