『第一章』

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 まず最初にやったのは“ロボット”というエチュードだった。順番にロボット演じ、誰かにタッチしたらその人がまた違うロボットを演じる。ただそれだけの事だがそれはかなり難しい事だった。  どんなロボットにしよう、同じロボットじゃない方がいいのか、タッチするタイミングは?特に目的もない“ロボット”なのに考える事が沢山ある。  けどそれがなんなのかも分からない状態であった私は何なんだこのクラスは……、    という感じだった。   次にやったのは“車の中”というモノだった。  選ばれた4人が車の中で好きなように会話をするという内容だ。目的地も、4人の関係性も会話の中で決まっていく。この様な野放し的なエチュードだと、留学生の私はやはり1人浮いてしまう事が多々あった。    会話に付いていく事も難しくて何も出来ず、落ち込む事も多かった。  しかしその内に自分の状況を逆手に取り、英語がつたない役を敢えてやり流れを作ったり、日本語を喋って相手に言葉の壁を作らせたりと楽しむことも覚えていった。  けれど台本の授業には最後までかなり苦労した。  英語でセリフ覚えも大変だが、発音や言い方次第でどうしても外国人という設定になってしまう。時にはその発音は女性の発音だと言われた事もあった。   正直、このままアメリカで演技をしていく事も少しは頭の中にあったが改めて外国人がここでやっていく事の厳しさを知り、早く卒業して日本で俳優になるという事を決意した。そう言った意味でも、今ここでこのクラスを受講した経験はもの凄く大きな価値となった。
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