『第一章』

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 きっとその様な夢ができたのは母の事があったからかもしれない。  母は私が15歳の時に癌で亡くなった。  母を亡くした影響はかなりあった。2つ上の兄、4つ下の弟、そして父。家庭のリズムが完全に崩れ、兄弟はそれぞれが親戚の家、祖母の家などに別れて生活が始まった。もちろん今思えば感謝しかないが当時の自分達は毎日が苦しかった。  父も180度変わった生活にもの凄く苦しんだに違いない。もしかしたら自分の心はその頃から閉ざし始めたんだと思う。母の死という悲しみからどう立ち直るのか、毎日そんな事を考えていく内に辿り着いた解決策は “もしも母が生きていたらという世界は存在しない”  という現実をちゃんと受け入れる事だった。  そうなると命の尊さをもの凄く感じると共に、変な言い方だが死に対して少し冷たくなった自分もいた。
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