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第7話
晴れて恋人同士になったということで合意する。念願叶った恋に祐介はこちらが恥ずかしくなるほど舞い上がり、直紀が強く出れないのをいいことに後ろからくっついてくる。
「つうか、てめえは振られたばっかだろうが。あの子はどうしたんだよ」
「んん? あー、えっと、実はね」
つい先日の振られた騒動に話を向けて、切り替えが早すぎないかとちくりと刺す。するとばつ悪く頬をかきながら口ごもり、本当のことを白状した。
「ゆいちゃんとは付き合ってなかったんだよ。教室で話してたとき祐介くん好きなひといるんでしょ? って言われて、それからちょっと相談してただけ」
「じゃあなんで嘘ついてた」
「それは作戦っていうか……ちょっとでも気にしてもらえたらいいな、みたいな」
あの子とは本当に彼氏彼女の仲ではなく、ただのクラスメイトだそうだ。同性の幼馴染相手にどう意識してもらえばいいのか見当がつかず、きちんと相手に許可を得ての策だったらしい。
「あ、もちろん直紀のことは言ってないよ。でもああやって、好きなひとのこと話せたのは楽しかったなぁ」
「……ふうん」
すっかり信じて騙されてしまい、祐介の目論み通りになってしまった。なんとなく腑に落ちずにいると、昇降口で絡んできた先輩が受験だと言っていたことを思い出して、苦し紛れに口を開いた。
「もし高校を卒業してからも続けたいんなら、条件がある」
「なに? 俺にできること?」
「それはお前次第だな」
授業態度や外見などの素行はともかく、これでも直紀は勉強ができるほうだ。定期テストの学年順位はいつも上位で、学年主任にうるさく指導されないことにも一役買っている。
将来のことを考えずに今だけよければいいと思えるほど、直紀は楽天的になれない。おそらく前者寄りである祐介の意思を確認して、まだ先のことのようで身に迫りつつある進路に照準を当てた。
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