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結婚するまで、なぜ貧乏男爵の娘である私が伯爵から求婚されたのか、わからなかった。
十六歳という夢見がちな年齢だった私。
豪華なウェディングドレスに目を輝かせ、王子様のような相手を想像していた。
でも、現実は甘くはなかった。
「リーゼ。明日のパンが食べれるかどうかは、あなたにかかっているのよ。旦那様に嫌われないようにね!」
「伯爵はうちの借金を支払ってくれたんだ」
突然決められた結婚――両親は戸惑う私をよそに大喜びしていた。
顔もしらない二十八歳の男。嫁ぐのは抵抗があった。
でも、世間知らずの十六歳、男爵令嬢。親が決めた結婚に逆らえるわけがない。
婚姻証明書にサインするなり、鶏小屋に入れられる鶏のように追い立てられ、伯爵家へ追いやられた。
そして、旦那様とのドキドキハラハラなご対面――
「お前は買われた妻だ」
これが、結婚初日にかける言葉だろうか。
貧乏で腐ったリンゴを食べても男爵令嬢。
「はぁ……」
失礼極まりない相手には、そんなトボケタ返事しか返せない。
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