12006人が本棚に入れています
本棚に追加
「伯爵夫人として恥ずかしくない振る舞いができるギリギリの女だから、結婚してやった」
「ギリギリ女……結婚してやった……」
思わず、繰り返してしまった。
「お前みたいな地味で平凡な娘を妻にする男はいない。ありがたく思え」
旦那様は王子様ではなかった(伯爵だから当たり前)。
黒髪に黒い瞳をし、ちょっと陰があり、暗い過去を背負ってますオーラ。
女性の萌え心をそれとなくくすぐり、モテそうな外見をしている。
ただし性格は最悪。
でも、恋人にはそうではないらしい。
「美しいミレーヌ。妻にはできないが、愛しているのは君だけだ」
「フレデリック様、わかっているわ」
胸が大きくて、肌をたくさん晒した下品なドレス。
白粉をたっぷり塗って、唇は真っ赤、爪も同色でまるで魔女。
でも、きっと男の人はこういう女性が好きなんだろう。
旦那様はミレーヌという女性とイチャイチャしていて、私には目もくれない。
すっかり二人の世界だ。
「では、私は伯爵夫人として、なにをすればよろしいのでしょうか」
「それくらいわかるだろう? 末席とはいえ、貴族の娘だ」
最初のコメントを投稿しよう!