3 世間体だけの妻 ~1年目~

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「そうねぇ、ベッドのお相手ではないことは確かよ」 「はははは。この女を抱くくらいなら、その辺の安い娼婦を買った方がましだよ、ミレーヌ」  私は道具だ。  伯爵夫人として、世間体を守るためだけの存在として買われただけのお飾り妻。 「仕事は屋敷の者に聞け。伯爵夫人の役目をこなせないようなら、下働きをさせるぞ!」 「馬糞の始末でもさせましょうよ!」  意地の悪さでいったら、ミレーヌはなかなかのものだ。  でも、馬糞は畑の肥料になって役立つ。  少なくとも、馬糞のほうが、目の前の旦那様よりは世の中の役に立っているのではなかろうか。 「リーゼ。俺とミレーヌが飲むワインを持ってこい」  結婚初夜。  私がやったことは、旦那様と愛人が飲むワインを寝室まで運ぶことだった――
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