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私の伯爵家での生活が始まった。
旦那様は私と世間体だけのため結婚したというのは、冗談ではなかったようだ。
「ミレーヌ、なにか欲しいものはないか」
「おい、甘いものを持ってこい。ミレーヌが甘いものを食べたいと言っている」
「ミレーヌが気に入らない柄のカーテンは変えろ」
寝ても覚めても旦那様はミレーヌのことばかり。
私の存在はとりあえず、そこらに置いてある便利な孫の手くらいにしか思ってないだろう。
顔を合わせても、声すらかけてもらえない。
存在感は旦那様の足置き台以下……考えただけで、むなしくなる。
「奥様。子爵様の晩餐会の参加はいかがされますか」
「……お断りするわ。旦那様があの様子では、夫婦で出席は難しいでしょう」
新婚の私たちを気遣ってか、届けられた招待状は山のようにあった。
お祝いのカード、プレゼント――伯爵家の家令と相談しながら返事を書き、お返しの品を送った。
大量にあったため、手紙を書くのがうまくなった。
手紙を通じて貴族の奥様たちと知り合えたのはよかったけれど、旦那様はその間もミレーヌと遊んでばかり。
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