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「旦那様、領地を視察しなくてよろしいのですか?」
「お前がやれ」
「旦那様、孤児院への慈善事業なのですが」
「お前が行け」
すべて私がやれの一点張り。
なんとかこなしていたけれど、財産の管理まで私というわけにはいかない。
旦那様はそこは厳しく、収入から支出までチェックする。
「おい。寄付が多すぎる」
「そちらは以前、旦那様が寄付をされた金額と同額にしました」
「なんだ。この花のプレゼントというのは」
「侯爵夫人のお誕生日のお花です。結婚祝いをいただいていましたので……」
「勝手なことをするな!」
バンッと机を叩いて、私を叱責する。
それでも、私は淡々と言い返した。
「お言葉ですが、伯爵家であれば、当然のことをしているだけです」
「ふん! 妻気取りか!」
「私が妻ではないのですか?」
「名前だけだ。俺の本当の妻はミレーヌだ。いいか、余計なことするな!」
余計なことはしていないと思うのに、叱られてしまった。
ミレーヌのためにお金を湯水のように使う旦那様を止められる人は誰もいない。
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