12009人が本棚に入れています
本棚に追加
じゃぶじゃぶ泉が湧き出るくらいお金が増えるワケがなく、使用人たちに支払うお給金の支払いができなくなってきた。
やがて、伯爵家を見限り、使用人は他家へ移っていくものが増えてきた。
「旦那様、使用人たちに支払うお給金ですけど……」
応接間のドアを開けると、そこでは旦那様が仕立て屋を呼び、ミレーヌのためにドレスを仕立てている最中だった。
仕立て屋は王宮にも出入りする人気の仕立て屋だ。
「なんだ。また金の話か」
「あらぁ、奥様。なにか用?」
「お金がないんです」
私がそう言うと、仕立て屋が驚いた顔をした。
「リーゼ! 嘘をつくな!」
「旦那様に恥をかかせて、気を引こうとしただけでしょ」
仕立て屋はじろじろと私と旦那様を交互に見る。
私のドレスは男爵家から持ってきた粗末なドレスで、ミレーヌは新品のドレス。
仕立て屋なら気づくはず。
「今日はいったん帰らせてもらいます。忙しいので……」
仕立て屋は逃げるようにして伯爵家から出て行った。
「旦那様。いい加減にしてください。銀器も売りましたし、絵画も売りました。もう若い使用人はいなくなって、昔からの使用人だけです」
最初のコメントを投稿しよう!