12010人が本棚に入れています
本棚に追加
妻として、旦那様に目を覚ましてほしくて訴えた。
それでも旦那様は私を馬鹿にして、話を聞かない。
「だからなんだ。せっかく人気の仕立て屋にミレーヌのドレスを作らせようと連れてきたというのに!」
「フレデリック様。奥様は嫉妬して邪魔をしたいのよ」
「恐ろしい女だ。笑顔一つない可愛げのない妻より、いつも笑顔のミレーヌのほうがいいに決まっているだろう」
微笑むような出来事があれば、笑いもするだろうけど……
伯爵家に来て楽しいことなんて、なにひとつなかった。
「仕立て屋が来ている時は出入り禁止だ。余計なことをするなと言っただろうが!」
「お金がないなら、奥様と使用人の食事を減らしたら?」
「おお。ミレーヌは頭がいいな」
食費なんて、ミレーヌのために使うお金に比べたら微々たるものだった。
「旦那様、このままだと伯爵家は破産します」
「うるさい女だ」
私の言葉はまったく旦那様に届かず、ミレーヌの言葉だけを信じていた。
とうとう旦那様は帳簿すら見なくなった。
このままでは、旦那様と一緒に共倒れだ。
私の家の借金より、その額は大きくなるに決まってる。
最初のコメントを投稿しよう!